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志帆の口から「元日」という言葉が出てきて、僕は喉を絞め付けられるような気持ちになった。
「柊ちゃんと初詣してさ、出店でお腹いっぱいになって。それからひと駅分を歩いて帰ったの。そんな、幸せな初夢だったよ」
そうか。あれは初夢だったのか。
志帆がそう言うのなら、そうに違いない。
志帆は小首を傾げて、少し眠そうに目を細める。ああ、志帆がそこにいる。
それからは、もうその話題には触れなかった。大学時代の昔話をしながら、それをつまみに二人で沢山飲んだ。
大学一年から振り返り、拓真や渚さんと楽しく過ごした日々を笑った。
二年のバイト、三年のゼミ、そして四年生で苦しんだ卒論に就活。
どの思い出も、二人同じものだった。元日から今この時までは省いたが、僕達の時間は確かにそこにあったのだ。
「あ、そうそう。
柊ちゃん聞いた?渚さん、赤ちゃん出来たんだってさ」
「え?」
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