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 下書きを作った事への感謝や論文内容の質問とかではなく、出し抜けにそう聞かれた。 「卒論助けてくれって泣きついてきたのは誰だよ」 「そうなんだけどさ」  PCから記録媒体を取り外しながら、拓真が続けた。僕の五日間の魂は、親友の持参のメディアケースに飲まれていった。 「付き合って五年だろ? 落ち着き過ぎだよな。お前と志帆ちゃんって」  そういう話か。 「そうかな」と曖昧な返事をしながら、恋愛なんてそういうものなんじゃないかな、と思う。  高三の時、東京の同じ大学を志望していた事を知って、クラスメイトの志帆と付き合い始めた。一緒に受験し、一緒に合格発表を見て、一緒に上京した。「五年」と他人から言われると随分と長いようにも思うが、僕にとっての志帆との恋愛はそれが自然な事だった。 「クリスマスも別々なんてな。心配とかしないわけ?」  畳んだノートPCは熱を帯びていた。拓真の卒論への熱量と比べてあまりにも真逆で、僕は苦笑いを隠しながらトートバッグにそれをしまった。 「お前は自分の卒論の心配だけしろよ。そのまま出したって教授にはバレるからな。穴だらけの論説並べただけなんだから、そこからちゃんと検証と是非を書き加えてだな……」 「そんな事はどうでもいいんだよ」 「は?」  拓真がフレームの無い眼鏡を外しながら、身を乗り出して訊いてくる。整った顔立ちに迫られ、卒論の話よりも熱っぽい昂揚が僕を身じろぎさせた。 「あのさあ。お前、志帆ちゃんすげー可愛いって分かってる?」  
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