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 拓真が鼻の頭を搔く。  拓真と渚さんは二人とも明るい性格で、楽しそうにしているところしか想像ができなかった。僕と志帆には無い刺激というか、いつもキラキラと楽しんでいるように見えた。  なるほど。漠然とした将来の不安は、少し歳上の渚さんには拓真より切実で、拓真はその心の持ちように戸惑っているのだろう。 「楽しくしてないと、渚といる意味無い」 「そんな事言うなよ。渚さんも真剣なのさ」 「二人でいてもあまり話したがらないし、返事も適当。あっちも見た目と真逆でほとんどマグロなんだぜ。あ、それは前からか」 「知らないよ。それはどうでもいい」 「お前らってどうなのよ」 「何の話?」  拓真が少し身を乗り出してくる。男子っぽい下品な物言いだとは思うが、綺麗な顔面でニコニコ聞かれてそれほど不快には感じなかった。 「さあな。仲はずっと変わらないよ、俺と志帆は」 「じゃなくてさ。分かるだろ? 俺の聞きたいこと」 「やめてくれよ。俺は志帆しか知らないから、基準が分からない」  へえ、と拓真が喉の奥で呟く。  期待に応えられなくて悪かったな、という険がある言葉を僕は飲み込んだ。  
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