★無理じゃね?

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★無理じゃね?

 バイトのない火曜日は早く帰る俺が夕飯を作ることがある。  まぁ、仕事が月曜休みの城くんが作り置きをしておいてくれることの方が多いが。  しめじとわけぎを肉で巻いていると、キッチンカウンターの上に置いてあったスマホが鳴った。  メッセージが届いたようで、見ると先輩からだった。  慌てて手にしていた肉を置いて手を洗う。  急いでスマホを手にすると、『金曜、飯行くか?』そんなメッセージに思わず「行く!!」と叫んでしまった。  返信もすぐにすると、『食い気味かよ(笑)』先輩からもちゃんと返信がきて嬉しくなる。  何となくカレンダーを見て、金曜日までの数日が早く過ぎてくればいいのにと願った。すると、 「あれ?何かご機嫌だな?」  振り返ると父さんが居てネクタイを緩めている。 「あ、お帰り」  スマホをジーパンにしまって手を洗った。  そのまま肉巻き再開すると、父さんはダイニングの方に回って腰を降ろす。 「ただいま。疲れたなー。でも、今日は拓翔も作ってくれてたんだ?城くん、何か作ってあるって言ってたぞ?」 「うん。きんぴらと豚汁な。魚はグリルん中、ご飯はもうすぐ炊けるから……すぐ食べるだろ?これだけ焼いちゃう」  フライパンを出して巻いた肉を並べていくと、父さんは立ち上がってカウンターの向こうから顔を出した。 「ごめんな。父さんが何もできないから」 「んー?俺は好きで城くんに教えてもらったし、今だってほとんど城くんがやってくれてんじゃん?」  申し訳なさそうに、でも、ふわりと笑う父さん。  こんな可愛げ、俺にはない。
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