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試してみるか?
大学二年の四月。
それまでしょっちゅう飯だ!カラオケだ!ボーリングだ!と遊びに誘ってくれていた先輩からの連絡がパタリと止んで……
しかも、俺からメッセージを送っても未読のままだったり、『だから、俺は就職して忙しいの!』そんな素っ気ないものだったり。
その先輩が『明日の夜、暇?飯行くか?』ってメッセージを送ってきたから昨日からソワソワして落ち着かなかった。
で、久々に会ったのだが……
「タクー!そこの唐揚げ取ってぇ!」
先輩は満面の笑みで手をヒラヒラと伸ばしてくる。
「……」
「ん?タク?何、唐揚げ食いたかったのか?」
「違いますよ。……どうぞ」
かわいく小首を傾げてくるから俺はグッと胸元を押さえながら皿を手渡した。
黒い長めの前髪に大きな瞳、出会った頃から女と間違えるようなそのかわいい顔はほとんど変わっていない。
先輩、瀬尾健太は中学の頃からの先輩で、弱小バスケ部で一緒だった俺は入部してすぐから先輩にかわいがられていた。
まぁ、あの時は「お!俺よりちっさい!お前も百五十ないだろ?俺と組もーぜーぇ!」なんて、身長で選ばれただけだったんだが。
その後約三十センチ伸びて現在百七十六の俺。
先輩より九センチ高くなっても先輩は俺と居てくれる。
「タク?たーくーと?何、お前どったの?」
目の前でまた男にしては小さな手がヒラヒラと動いていて、俺はその手首を掴んだ。
「好きです」
「ん?俺も好きだよー!お前と遊ぶのが一番楽しいし!」
真剣に言っているのにスルリと手を抜いてジョッキを持ちながらヘラヘラと笑われて、ちょっとイラッとする。
「そうじゃなくて!」
身を乗り出してキスでもしてやろうとすると、先輩は間に手のひらを入れてフッと笑った。
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