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「だから、何なんですか?」
ただ否定されて悲しみや焦りよりもイラつきが増す。
「女とは違うんだぞ?ノンケに男のモノなんてキツいっつってんの!」
なのに、先輩はもう話は終わりとでも言うように笑いながらポテトを手にした。
俺はそのポテトを奪って食べてやる。
「勝手にキツいとか決めつけないでもらえますか?」
「は?平気だって言いたいのか?」
「俺は男の喘ぎ声だって聞いて育ってるんでね」
それが父親の声だってのはまぁ複雑ではあるが、ここはあえて口にはしない。
「……あ、店員さーんっ!」
無言が続くかと思ったのに、すぐにまた店員を呼ばれて悪態をつきそうになった。
先輩は俺の話なんて聞いていないのだろうか?
「えーっと……芋、ロックで」
メニューを持ちながら注文すると、先輩はやっとこっちに向き直る。
「先輩……」
「試してみるか?」
呆れを前面に出して口を開いたのに、先輩がサラッと遮ってきた。
「は?」
だが、言われたことの意味が理解できない。
その間に酒が届いて、先輩はまた一気にそれを流し込む。
「お前、俺とセックスしてみるか?」
口の端から垂れた酒を甲で拭う姿がやけに色っぽく見えて、俺はただ惚けたまま頷いてしまった。
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