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先生とカフェで向かい合って座る。
できるなら先輩と離れたくなかったが、遊園地のことや父さんとのことが気になってしまった。
先輩も一緒に来ようとしてくれたが、聞かれたくない気がしたのも事実。
「拓翔くんは?」
急に呼び掛けられてビクッとしてしまう。
「ははっ、その警戒する姿はちょっと優希さんに似てますね」
微笑まれて更に警戒心が募った。
「父の名前……覚えてるんですか?」
父さんたちの反応は決していい関係とは思えなかったのに、この先生の言い方はただの保護者以上の関係を感じる。
「えぇ。優希さんは特別だったので」
匂わせるような言い方に眉を寄せると、先生はくすくすと笑った。
「大丈夫ですよ!ハッキリと振られていますから」
「はぁ!?」
父さんに振られている?
ということは……先生もやっぱりゲイ?
「じゃあ、あの遊園地は?」
「最初で最後のデートですね。楽しかったでしょう?まぁ、うまくはいきませんでしたから……苦い思い出ではありますけどね」
あの父さんが……あの頃は城くんも居たはずなのにデートなんか了承するだろうか?
考えてみてもわからない。
にっこりと笑う先生を見て、アイスコーヒーのグラスを握った。
「今夢中なのは一人だけ……ね?」
一度伏せてからゆっくり開かれた目が笑っていなくてゾクッとする。
だが、俺はしっかりと先生を見返した。
ちょっとした動きも逃さないように。
警戒は緩めない。
「健太先生のこと、本気ですよ」
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