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笑みを消した先生の表情。
辺りの空気が一気に冷えたようだ。
しかも、この目つき……底知れないモノを感じる。
「二人は?本当にただの先輩と後輩ですか?」
射るような視線を受けつつ何とか冷静を装ってコーヒーを口にした。
「それ、先生に関係ありますか?」
「好意を持っている相手に恋人が居るかどうかは重要でしょう?」
薄い笑みが不自然に口元だけにあって少し気味が悪い。
「付き合ってますよ!だから諦め……」
「でしょうね。さっきも手を繋いでいましたし」
俺の言葉に被せて先生はじっと俺を見てきた。
怯みたくはなくて俺もまっすぐ見返す。
少し笑うと先生はカップに口を付けてフーっと長く息を吐き出した。
「発表会が終わったら飯でも誘って……なんてのんびりしていられねぇなぁ?」
先生の声の低さも口調もガラッと変わって、驚きで言葉が頭に入って来ない。
「拓翔くんは彼女居たんじゃねぇの?」
「は?」
「何度か見かけたことがあるけど?」
ニッと笑われて、そっちが本性だと知る。
「彼女とは別れてるし、今は本気で先輩と付き合ってるんでご心配なく」
舌打ちしそうになるのを堪えて答えると、先生は鼻で笑った。
「女と付き合ってたのにわざわざ男を選ぶ必要なくね?」
「は?」
「何かと不便だろ?どうしたって人の目はあるし女と同じようには……なぁ?」
含みを持たせた言い方にイラッとする。
優しくて穏やかな先生のイメージだったが、やはり感じた嫌な予感は当たっていたらしい。
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