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「でもやっぱり……」
グチャグチャになった弁当を食べながらじっとと見ると、先輩は呆れたようにため息を吐く。
「いいから食え」
「だって……付き合ってるんですよね?」
取り合ってくれない先輩が恨めしい。しかも、
「……とりあえず?」
「何ですか、それ」
そこは即答してくれず、少し考えられたのが悔しかった。
「お前が“お試し”でいいって言ったんじゃねぇか!」
残りの弁当をかき込んで先輩が立ってしまう。
俺も急いで食べてその後を追いかけると、後ろからギュッと抱き締めた。
「邪魔、お茶飲めねぇ」
「やっぱシたいです」
「……お前さっきの聞いてた?」
ジト目を向けられてその首元に顔を埋める。
チュッと音をたててキスをすると、先輩のため息が聞こえた。
「俺まで喰う気か?」
「……じゃあ、喰って下さいよ。……俺のこと」
さすがに恥ずかしくなってきて声が掠れる。
消え入るような語尾をツッコまれることもなく、身動きさえないのはどうしたらいいのか。
「……先、輩……?」
足を踏み出して先輩の前に回り込んでその顔を覗き込むと、ゴッと先輩の頭が降ってくる。
容赦ない頭突きの衝撃で俺はしゃがみ込んだ。
「っ……」
頭を押さえて呻くと、先輩はクルリと足の向きを変えてしまう。
抱いてもくれない。
やはり先輩の中での俺は後輩の要素が多い気がして凹むと、
「……準備して来い」
テーブルの上を片付けながら先輩が言葉を投げてきた。
「へ?」
テーブルを退けて、ソファーベッドを引き出す先輩を見てやっとその意味を理解する。
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