22人が本棚に入れています
本棚に追加
今夜、その事務所の社長に会うことになっていた。その事務所のことをインターネットで調べてみたが、ホームページのようなものは存在しなかった。
両親に相談するべきだろうか?里穂だったら、何と助言してくれるだろう?
不安を抱え、私は指定されたホテルへ出向いた。途中で何度も帰ろうと思ったが、女優になれるという誘惑が私を向かわせた。
やはり、ホテルという場所が私に嫌な思い出を想起させた。私は小遣い欲しさとちょっとした好奇心から、出会い系サイトに登録し、援助交際に手を染めた。中学二年生の時だ。
怖いもの知らずというものは怖ろしいことだ。ティーンエイジャー特有の好奇心と冒険心が招いた災厄は私の心に深い傷を残した。
自業自得と言えばそれまでだが、若気の至りは誰しも経験することで、恥ずべきことではない。大人のステップを上がるための助走だと思っている。
だけど、あの時は本当にお金が欲しかったのだ。買いたい洋服のため見ず知らずの父親くらいの男性に身体を提供する。今考えれば異常なことかもしれない。でも、あの当時はそのような感覚がなかった。
まだ、その相手が知らない人だったら救いがあっただろう。だけど、援助交際をした人は私が一番よく知っている人だった。
親友の父親。家に遊びに行くと、屈託のない笑顔で迎えてくれる良きおじさん。しかし、それは表の顔で、裏の顔はケダモノに近い。
あろうことか、私はおじさんに裸の写真を撮られ、交際を強要された。もちろん、裸の写真は私の口封じのための脅しだ。大人は汚い。これが大人のやり方かと、愕然とした。
ただ、お小遣いはくれた。おじさんは約束は守った。おじさんも良心の呵責はあったということか。
最初のコメントを投稿しよう!