乾貴代子3

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乾貴代子3

 私はごくごくふつうの主婦だ。朝は子どもたちを学校へ送り出し、夫を会社に送り出す。主と子どもたちがいなくなった後、掃除や洗濯をする。ルーティンワークを毎日することが私の生活の基本であり、私には一番適している。  午後になってから、私はガレージに赴き、軽自動車を走らせ、隣町の大型スーパーへ買い物に行く。  商店街で買い物を済ませれば、車を使わずに済むのだが、私は車を運転することが好きなのだ。それに商店街に比べて、大型スーパーは品揃えが充実している。主婦はわがままな生き物だ。品物が多い方を選択するのは自然なことだ。  私は田畑だらけの道を車で走る。まだ、免許取り立ての頃は、ハンドル操作を誤って、田圃の畔にタイヤをとられたことがあった。  今は運転歴も十年以上なので、そのような凡ミスはなくなった。  私はここ一週間、隣町へ車を走らせていると、奇妙な女を田圃で目撃する。上下黒のトレーナーを着た中年の女だ。一体、そこで何をしているのか?  いつからそこに佇んでいるのか?ただ一つ、わかることは、その女は単身者であることくらいだ。直接問いただしたわけではないが、既婚者の直感で分かる。  幸が薄いという表現はいささかきついが、私にはその女がそう映った。
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