安西康治2

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 刑事の拳がぶるぶる震えていた。正義感の強い奴だ。  俺は容疑者たちに同情しそうになった。彼らも俺も含めて、強面の刑事たちに唾を吐きかけられながら、どやしつけられてきたのだろう。 「あんた、金魚の方が奥さんより大切なのか?」 「金魚?」 「すっとぼけてんじゃねえよ。あんたが手塩にかけて飼育している金魚だよ。三匹とも死んじまったらしい。金魚の死骸を見て、激高したあんたは、奥さんの管理の不手際を非難して殴ったのさ」  俺は再び拳を見た。刑事はその手首を掴み、その拳を俺の鼻先につきつけた。 「やったことを認めるな?」 「はい。私がやりました」
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