乾里穂4

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 つまり、私は現在、三角関係にあるわけで、私は宮崎くんを取るか、淑子を取るかの究極の選択を迫られているわけだ。  屋上で空の色が急変したことが、不吉な前兆のようで怖かった。淑子が私の手をとった時、私の手が濡れていたことに違和感を覚えなかったのか?淑子は私の嘘に気づいていたのかもしれない。淑子はああ見えても、結構鋭い。やっぱり、母親に相談しよう!私は袋小路に入り込んだ。そこから出るには、母親の導きが要る。  前々から私は、淑子を家に招待したいと思っていた。淑子さえよければ、うちの家族はいつでも歓迎する。  母親に相談すると、今度、連れてらっしゃいよと二つ返事で言った。母親と弟の健太はいいとしても、父親がいいと言ってくれればいいけど...。  しかし、私の心配は杞憂だった。予想に反して父親は積極的に連れて来なさいと言った。  最近、父親は至極、機嫌がいい。母親からは父が工場勤務に回されたと聞いたばかりなので、父は落ち込んでいると思っていた。  父親の仕事の内容はあまり知らないが、きっと大変なんだろう。誰よりも朝早く起きて出社し、誰よりも夜遅く帰宅する。大人は子どもと違って、責任が重い。父親の悩みに比べれば、私の悩みなんて、取るに足らない。  三角関係?友情?勉強?そんなこと、悩みに入れるなんて、馬鹿げてる。しっかりするんだ!里穂!  九月五日、淑子を呼び寄せることになった。淑子は私の家に行ってみたいと前から言っていた。  私は淑子が予想以上に喜んでいたことに、ホッと胸を撫で下ろした。
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