第1話【魂の選定】

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それから数時間後…二条達也はあの時の事を思い出していた。降りしきる雨の中で…スケートボードに乗って…遊ぶ2人の少年。夜も鬱蒼と暗い公園の中だと言うのに大人が見ていない所でスケボーを練習していた少年たちを見ながら二条は考え事をしていた。 あのハーフパンツをはいた少年の姿が何処か自分に見えて…その悲しげな雰囲気は二条の心を映している様だった。心の中にいる…幼い自分が現実世界に出てきた様な…誰かに相手をして欲しくて…一生懸命何かを練習するけど…転んで躓いてやる気を無くして練習を辞める。 前世の二条は高校の頃…ギターを弾いて躓いて練習して藻掻いて社会人になったけど…踏み出す勇気が無くて…「夢」を諦めた。社会人になってからは仕事仕事の毎日で…時たま路上で歌ってるミュージシャンを見かけてはただ羨ましく感じた。 彼らの中には情熱があって…夢を夢で終わらせたくないという強い意志を感じる。下手くそなギターを弾いてゆずの歌を歌ってた高校時代。そんな日々がフラッシュバックして…二条は彼らのライブを懐かしむ様にただ眺める。そこには高校を卒業したばかりの二条がいて…夢を諦めきれずにギターを持って路上で歌を歌ってる。 そんな彼らが自分に見えて…ただ懐かしくて…彼らの歌を聞いて回る。社会人になってから二条はずっとそうやって彼ら1人1人の歌を聞いて生きてきた。そんな前世での苦い記憶を思い出しては溜息が出る。「あの時一歩踏み出せて居れば…何かが変わったのかな?」二条はポツリとそう呟いて空を見上げる。数分後…二条の耳に懐かしい声が聞こえてきてハッとする。 二条達也「っ!!!!!?」 ??「二条ぉ!!!?二条ぉ!!!?あんた何こんな所でボッーとしてんのよ!!!?」 二条達也「んだよ?朱里かよ?何なんだよいったい?」 朱里「何なんだよ?じゃないでしょ!!!?あんたが遅いからうちらが迷惑してんのよ!!!?」 朱里「サークル!!?もう始まってるわよ!!!?部長カンカンなんだからっ!!!?」朱里はそう言うと…迷惑そうな顔をして…二条の手をひいて歩き始める。
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