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そこには…二条が若かりし頃に書いた…お粗末な曲の歌詞がしっかり…記入されていた。高校を卒業して1番最初に書いた曲。そこに見えたのはあの時の自分の想いと情熱。そして何よりもあの男が嫌いだ。という今でも変わらない揺るぎ無い気持ち。何代ケータイを乗り換えても…何回歌詞を自身のケータイから消去してもずっと頭の片隅にあったお粗末な曲だ。そんなお粗末な曲の歌詞を見て二条は呟く。
二条達也「なぁ?あんたは俺に何を教えてくれたんだ…?」
⇩二条が見詰めるスマホの中に書かれている歌⇩
いつの間にか追い越した背中
生きる為にズル賢くていつも必死な貴方を覚えている。
時がたつのは早いもので…時と共に忘れていた。だけど今あなたを思い出した。
何が駄目だとか何が正しいだとかそんな事はどうでもいい。綺麗事だけじゃこの世界は生きてはいけない
生きるために汗まみれになって
生きるために泥まみれになって
生きるために嘘つきな背中そんなあなたが
親が悪い窓辺にそっと囁いてみた
いつの間にか追い越せた背中
生きる為にズル賢くていつも必死なあなたを覚えていた。
何が正義で?何をしなきゃいけないだとか?そんな事はどうでも良い。綺麗事だけじゃこの世界は生きてはいけない
生きる為にズル賢くなって
生きる為に嘘つきになって
生きる為に必死な背中そんなあなたが
大嫌いだ窓辺にそっと囁いてみた
⇧二条が見詰めるスマホの中に書かれている歌⇧
二条が書いたこの曲には…まだメロディーがない。作りたくても作れないのだ…。作れば…引き返せなくなる。作れば諦めきれなくなる。
叶わない夢だと言うのに…いつまでも足掻いている今の自分が…許せなくなるからだ。だから…いつまでも動けずにいる。そして認めたくないのだ。
大嫌いなあの男のお陰で皮肉にも…歌が作れたということに…。前世の二条は社会人になってから何曲か歌を作ろうとしたが…オリジナルを作ることの難しさを痛感した。
何よりも難しかったのは…詩を書くことじゃない。その誌にメロディーをのせて言葉にすることだ。歌おうとしても言葉に詰まるのは…あの男が心の底から嫌いだから。
誰よりも嘘つきでズル賢く…生きる為だけに必死なあの背中を…蹴りたい背中を…蹴れない自分が…情けなくて…ただ言葉に詰まる。そんなやるせない気持ちを心の奥底に仕舞いながら…二条達也は窓辺にそっと囁く「大嫌いだ」…。
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