きみが卵だったら

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ううん、そんなことないって途中からわかっていた。 そんなことをするのは親鳥じゃないね。 だって、その昔、まだ雛鳥だったころ、空を自由に飛べたかったから。 青くて広い空にあこがれて、危ないとわかっていてもその先を自分の目で見たかったから。 大空に自分の力で羽ばたいて、自分の体で風を感じて、自分の目で好きな景色を見たときに感じた「幸せ」は卵の中じゃ味わえない。 卵の中は安全で安心で快適だったとしても、ずっとそこにいるといつか腐敗が心にも体にも浸透してしまう。 羽ばたく力を削いでしまって、あの大空に羽ばたくことができなくなってしまう。 そんな悲しい思いはさせたくない。 そんなむなしい思いはさせてはいけない。 だからきみが卵でなくてよかった。 別れるのは寂しいけれど、きみが羽ばたくことができるなら、 それ以上の幸せは他にない。 だから改めて言おう。 生まれてきてくれてありがとう。
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