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伯父が帰宅すると、夕食に美味しいお寿司が出た。その時に私は、伯母から少なくない現金が入った封筒を、祝いにと手渡された。嬉しかったが恐縮のほうが大きく、兄には絶対見せられないと思った。
K県の公文書館がこの家に残されている古い文物に興味を持っており、担当者が数度訪れているという話が出て、驚かされた。彼らと一緒に蔵の整理をするうち、さっきのアルバムを見つけたのだと伯母は語る。
「ずっと暮らしてたらわかんないんだけど、この集落が民俗学的にも面白いんだって」
「ふうん、例えばどんなところが?」
「この家と朱桜神社の関係とか」
朱桜神社とは、この町唯一の宗教的史跡で、この家から歩いて10分もかからない場所に建つ。名の通り、河津桜に囲まれている。神社を守って来た櫻庭家と一宮家は、長い年月を経た姻戚関係にあった。朱桜神社の宮司に一宮家の女子が嫁いだり、櫻庭家の男子が一宮家に婿に来たりしていたが、伯母によると、このような関係は不自然だということで、祖母の代から改められたという。
「だからね、ひいお祖父ちゃんの哲弥さんが、櫻庭家からの最後のお婿さんなの」
伯母の話は、また私にうすら寒いものを感じさせた。桜を守る神社と女系一族の、濃度の高い関係。私の胸の中の薄暗いものを晴らしてくれたのは、影の薄い伯父の明るい声だった。
「お義父さんは生前、ほんとに僕に良くしてくれたんだよ……余所者同士だから」
「……そうよね、私伯父さんがそこまでアウェーだったとは知らなかった」
伯父は私の言葉に笑った。伯母と母は、別に面白くはない様子だった。
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