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【Side架純】
「俺の傍にずっといてくれませんか」
シースルーのゴンドラの絶景をバックに、綾瀬が言った。
捨てられるんだと思ってた私は、戸惑い半分嬉しい半分でリアクションに困った。
「…本当に、そう思ってる?」
「思ってるよ」
「どうして?」
私が不安になったら、それを解消するために努力するなんて。
めんどくさいって思わないの?
…私って、こんなにめんどくさい女だったっけ。
「だって、……愛してるから」
綾瀬の声がだんだん小さくなる。
愛してるという言葉に、顔が熱を帯びる。
真冬なのに、炎天下にいるんじゃないかと思うほど体が汗ばんだ。
それは綾瀬も一緒なようで、彼の白い肌が耳の端まで真っ赤に染まっている。
赤面することを、トマトのように赤いと例えることがあるけれど、まさしく文字通り綾瀬はトマトのようだった。
「私も。あ、…愛してる」
「じゃあ…」
綾瀬がパッと顔を上げる。私は頷いた。
「うん。これからも、末永くよろしくお願いします」
まだプロポーズなんて先だと思ってた。
復縁したばかりだから、結婚の話が出るのは今じゃないと勝手に思ってた。
でも、綾瀬はそんなことを考えず、結婚したいという意思を私にまっすぐ伝えてくれた。
半年前、恋人関係が終わったのは、他人に戻った時だった。
積み重ねてきた日々が終わったと思ったあの日。
綾瀬と歩いて行く道はもうないと思っていた。
2度目の恋人関係の終わりは、前向きな未来。
恋人関係が終わるのと同時に、私たちは夫婦に、家族になる。
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