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バタバタと時間が過ぎていった。 お互いの両親への挨拶は、緊張する間もないほどあっという間に済んだ。 本籍地から戸籍謄本を取り寄せて、何度も書き損じた婚姻届をやっと綺麗に書き終え。 証人の署名欄には、郁人さんと恵理さんが名前を書いてくれた。 そうやって完成させた婚姻届を、23日に綾瀬が提出しに行った。 私は想像していた通り、仕事の応援に駆り出されたけれど、仕事中は婚姻届のことが気になって、きっと上の空だった。 結婚の報告を、出勤していたスタッフと店長には伝える。 「今日から湊さんじゃなくて、榊原さんなんだね」とか「おめでとうございます」の祝福の声を浴びて、名字が変わったことを思い出した。 25年慣れ親しんだ名字から変わったという実感はあまりなくて、不思議な気分だった。 仕事終わり、一度家に帰って普段着より少しオシャレなワンピースに着替えた。 綾瀬と待ち合わせている最寄りの駅へ足を運ぶと、カジュアルなジャケット姿の綾瀬が、周りをキョロキョロと見回しながら立っている。 「お待たせ」 駆け寄って声を掛ける。 綾瀬が弾かれたように振り返り、「行こうか」と少し上ずった声を上げた。 「緊張してんの?」 「するよ、そりゃ。だって、結婚して初めての待ち合わせだよ?」 「何それ」 意外な理由で緊張しているのが、面白くて私は思わず笑った。 ホテルは、明らかに高そうな外観のホテルだった。 近場のホテルだったけど、高級路線のものに違いない。 ロビーで私が委縮している間に、綾瀬はチェックインを済ませ、ルームキーを受け取って来た。 通されたスイートルームは、マンションの一室のように大きな部屋だった。 壁一面くらいのサイズの窓から、都会の夜景が一望できる。 間接照明だけが部屋を照らすその空間からは、雰囲気が漂っている。 「す、すごい…」 寝室と壁を隔てて、L字のソファとガラスのテーブルが並んだ応接間のような空間がある。 そのテーブルには、宿泊特典らしきテディベアが居座っている。
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