302人が本棚に入れています
本棚に追加
終わった。
俺はプリントをファイルにしまいながら、ため息をついた。
グループワークでは自分の意見を上手く言えなかったし、進行やタイムキーパーの美味しい役は他の学生に持っていかれてしまった。
慌てて発表役をかったのはよかったけれど、発表の時に緊張して、噛みに噛んだ。
こんな成果では、選考に残れるはずがない。
就活解禁日になれば、また選考方法は追加されるだろう。1次面接から受けて、内定をもらう方法もあるはずだ。
でも、この企業は大手で、採用枠自体が狭き門だ。このインターンシップで、どれくらいの人が最終面接までたどり着くんだろう。
それに、1次面接を受けるための書類選考を通過できるのかもわからない。
「はぁ…」
カバンにファイルをしまい、ファスナーを閉めた時だった。
「榊原さん」
名前を呼ばれ、顔を上げると社員の佐藤さんが立っていた。
彼の後ろで、多くの就活生が会議室を出て行くのが見える。
「は、はい!」
ため息ついてたのを注意される?それとも、発表の時噛みに噛んでたのを指摘される?
怖くて、耳を塞ぎたくなった。
「グループワークお疲れ様。榊原さんが一生懸命グループワークに取り組んでいるのを見させてもらいました」
佐藤さんは言い、それから声を潜め、「それで、榊原さんには是非最終面接に進んでほしいなと」
え?俺は耳を疑った。
失敗したと思っていたから、まさか声を掛けられるなんて思ってもいなかった。
「どうかな?」
「お願いします!」
社員と話している数人の就活生以外、会議室からいないのを見て、俺は佐藤さんに頭を下げた。
「よかった。榊原さんみたいな物事に一生懸命取り組んでくれる人に、活躍してほしいと思ってるんだ」
これはチャンスだ。とてつもないチャンスだ。
俺は心の中で力強くガッツポーズをした。
「じゃあ、面接の日程調整に関するメールをまた後日送るから、確認次第返信よろしくね」
「はい!」
最初のコメントを投稿しよう!