*01* 運命的な出会い

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最終面接に進める! 軽い足取りで会議室を出て、エレベーターホールへ向かう。 そこには数人先客がいた。ほとんどが色の薄いスーツだったけど、その中にひとりだけリクルートスーツの学生が混ざっている。 あ、さっきの。 横顔でわかった。グループワークで一緒だった湊さんだった。 皆先に帰ったのに、今帰りってことは、湊さんも声を掛けられていたのかな。 彼女、R大学って言ってたな。遠くはないけど、近くもない。 今日、このまま別れたら――もう二度と会わないんだろうな。 声を掛けてみようか? いや、何て声掛けるっていうんだ。 俺は就職活動に来たのであって、恋活をしているんじゃない。 それは相手もそうだ。 話しかけたって、まして連絡先なんか聞いたって、迷惑でしかないだろ。 躊躇っているうちに、エレベーターが来た。 エレベーターに乗り、オフィスビルの1階まで下ると外に出る。 駅へ向かう集団の中に、彼女の姿はなかった。 帰りの方角は違うようだった。 そりゃそうだよな。俺は長く息を吐く。 綺麗な人だったな。 もし――もしも、最終面接を通過して、俺も彼女も内定がもらえたら。 そうしたら―― 「んっ!?」 そうない奇跡を考えながら駅のホームに着いた俺は、驚いて思わず足を止める。 俺の向かう先に、湊架純がいた。 この駅には、他にもいくつか路線がある。 駅へ向かう集団の中に、彼女の姿はなかった。はずなのに、彼女は俺と同じ路線のホームに立っていた。 これを逃したら、きっともう会わない。そんな気がした。 話しかけなかったら後悔するに違いない。 そう思うほど、俺は湊架純の顔に惹かれていた。 これが、いわゆる一目惚れというやつなのだろう。 話しかけて拒否られても、この先会わない人だ。ネタにされても痛くもない。 聞くは一時の恥聞かぬは一生の恥と思えばいい。 「あ、あのっ」 意を決して話しかける。しかし、彼女は振り向きもしなければ、返事もしなかった。 無視された。ということは拒否されたということか。 引き下がろうとして気づいた。 彼女の耳に、ワイヤレスイヤホンがハマっている。 「あの」 俺は、何を思ったか彼女の肩をポンと叩いていた。 驚いたのか、彼女が弾かれたように顔を上げる。
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