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思い切って聞く?
いや、でも何て聞けばいいの?
綾瀬って、結婚したら奥さんには家庭に入ってほしい人?って直球で聞けばいいの?
いやいやいや、さすがにデリカシーなくない?
というか、そういうこと聞くと、結婚急かしてるみたいになっちゃうんじゃあ?
私の考えすぎ?
でもなぁ…私の意図が全部相手に伝わる訳じゃない。
急かしてるつもりはなくても、綾瀬はそう受け取るかもしれない。
「喋んないけど、どうしたの?お腹痛い?」
考え込んでしまった私に、綾瀬が聞いてくる。
このお気楽め。ええい、お酒の勢いで聞いちゃえ。
「綾瀬ってさ、結婚したら奥さんには家庭に入ってほしい人?働いてても気にしない人?」
「……」
応答がない。
あれ?もしかして失敗した?
ぱっと顔を上げて、向かいに座る綾瀬の顔を見ると、目を伏せて戸惑っていた。
急かしてるって思われた!?
「あ、ああ、まって、違うの。もしもの話だから。急かしてるとかじゃないから!」
慌てて弁明しようと口を開いたものの、言いたいことが次から次に出て来て、早口になってしまった。
おまけに少し上ずった変な声。
こんなつもりじゃなかったのに、これじゃあ急かしてひとりでパニックになってるみたい。
恥ずかしさが急激にこみあげて、飲みかけのワイングラスを一息に飲み干して空にした。
綾瀬に質問の隙を与えず、私は近くの店員さんにワインを注文した。
「あのさ――」
ワインを待つ私に、綾瀬が話しかける。
何か言われたような気がしたけど、急に酔いが回って、何を言っているか聞き取れない。
ぐるぐると、目の前の景色が回っているような気がした。
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