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◇◆◇◆
「う……ん」
目を開けると、常夜灯のついた薄暗い天井が目に留まった。
ここは――。
ゆっくり体を起こすと、ズキズキと頭が痛む。
喉が妙にカラカラで、気持ち悪い。
「あ、起きた?おはよ」
部屋着姿の綾瀬に話しかけられ、私は「おはよ」と返しながら、記憶を辿る。
確か、仕事が終わった後、綾瀬と肉バルで食事をして。
それで綾瀬に、結婚したら私に働くのをやめてほしいのか聞いて――それで…。
そうだ、ワイン一気に飲んで酔いが回っちゃったんだ。
どうやって帰って来たのか覚えがないけど、綾瀬の部屋にいるということは迷惑いっぱいかけちゃったんだよね。
「ごめん…」
謝りながら視線を下に向けると、綾瀬は私の服を替えてくれたみたいだった。
もしかして――
「私、戻した?」
言葉を慎重に選んで聞くと、綾瀬は首を振った。
「服、しわになるかなって思ったから」
少し大きなスウェットから、綾瀬の匂いがする。
まるで綾瀬に包まれているみたいだった。
「綾瀬にいっぱい迷惑かけてごめんね」
「大丈夫。それに、先々月は俺が酔って、迷惑かけたし。お互い様だよ」
綾瀬の優しさに、ありがたいやら申し訳ないやらで、感情がぐちゃぐちゃだ。
「でも珍しいね、架純が酔い潰れるの」
確かに、お酒に弱い綾瀬と比べて、私が酔い潰れることはあまりなかった。
お酒を飲むペースは、気を付けないと。
「雑炊食べる?」
「うん、食べたい」
私が潰れて寝ている間に、綾瀬はたまご雑炊を作ってくれていたらしい。
付き合い始めた頃は、綾瀬は実家暮らしで料理はできなかった。
社会人になって、私に料理を作ってくれるうちに、だんだんと慣れて来て、今では私より上手いかもしれない。
きっと結婚したら、いい旦那さんになるんだろうな――って、私何考えてるんだろ。
急かしてないって綾瀬にあれだけ言ってたのに、まるで説得力がない。
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