*09* Re:START

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「はぁ…」 ため息をつき、折り曲げて座った膝に顔を埋める。 その時、たまご雑炊の和風だしのいい香りが鼻をくすぐった。 「おいで」 綾瀬に手招きされ、私は立ち上がった。 たまご雑炊の入ったお茶碗が置かれたテーブルに行くと、綾瀬がクッションを床に置いてくれた。 その上に腰を下ろし、スプーンを持つと「いただきます」と手を合わせ、食事を始める。 「美味しい!」 「よかった」 気を遣われているのか、単に話題にしたくないのか、私が潰れる前にしていた話の答えは綾瀬の口から出て来なかった。 後ろ向きの気持ちでいたくなかったから、今は気を遣ってくれているのだと思っておこう。 そういえば―― 「あ、お会計」 酔い潰れたということは、綾瀬に全額負担してもらったことになる。 急にそれに気が付いて、私は立ち上がった。 ソファ脇に置いてあるカバンから、財布を取り出してテーブルに戻る。 「ねぇ、いくらだった?肉バル」 「いいよ、別に。あれくらい奢るよ」 付き合ってから、たまに綾瀬が奢ってくれることはあったけど、基本飲食代は割り勘だった。 お互い学生の頃からバイトしていてお金はあったし、今だって社会人になって働いているから、お金絡みでトラブルになるのが嫌でそうしていた。 「でも」 「ほら、昇進話が出たことだし、前祝い?ってことで」 「ダメだよ、だって、まだ確定じゃないし…」 奢ってもらうということが普段あまりないし、迷惑をかけた私が財布を出さないというのも抵抗があった。 「この前綾瀬が潰れた時は、後でお金渡してくれたでしょ」 迷惑料として、と私がお金を渡そうとするも、綾瀬は私の手を掴んで首を振った。 「いいから」 綾瀬はそう言って、それから「それに」と何かを付け加えようとする。 でもその言葉の先を聞く前に、キッチンから電子レンジが加熱終了を告げる音が聞こえてきた。 「あ」 綾瀬は声を上げ、立ち上がるとキッチンに姿を消す。
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