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ああ。
出会ったのはいよいよ桜燃えんと欲すあの春のこと。昆山寺に続く参道は花びら舞う陽射しに溢れて春の幕開けを告げている。おらの体は狐に憑かれたごとく、学校からの家路をはずれてふらふらと、まるで何かに吸い寄せられるかのように石畳の上を進み……
おらはソメノちゃんに出会った。
「ぱるるん、ぱるるん、ぷらりのら!」
ひときわ大きな桜の枝葉の下、白い煙がぬわんと現れて、淡い桜色の量産型女子なガーリーコーデをした美少女がおらの前に現れたんだ。
「あわわ……」
「あわわじゃありません、少年! あなたはたしか水口さんちの蒼太くん? よく見たらイケメンじゃない! あたしのタイプかもー!」
「お、おらは…おらは…。ど、ど、どうせ生きる価値のない木偶の坊、中1にして引きこもり、親の目を盗んでは課金しながらオンラインでボスキャラを倒す毎日。はあ、負い目を感じながら気がつけば15の春。なんとか高校に通うため手続きをと家から出てみた次第で。」
「あなたの人生はこれからじゃない! 羨ましい! ねえ助けて欲しいの。あたしの命を救ってちょうだい!」
「命を救う? キミは死んでしまう?と……」
「そう、あたし難病の桜餅病らしいの、治すためにはあなたの力が必要なわけ。あなたに助けてほしいの! でないとあたしはこのまま女を知らずに!」
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