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暫くして、祖父母の家に着いた。
「まあ、お帰りなさい、集ちゃんや」
「うん。ただいま」
続けて祖母から誕生日おめでとう、の言葉を貰って俺は肩に寄り掛かる妖精を差し出した。
「まあ?! 可愛らしい妖精さんねぇー。まるであの子にそっくりだわ」
「……うん。そうだね」
俺の中に強い衝撃が走る。そう、こいつはあいつに似ているんだ。ずっと気づいていない振りをしようと思っていたのに。
妖精を持つ俺の手に自然と力が入る。
「そ、それでこいつを預かって……」
「ミューーーー!」
俺が震える手で実質的なお別れをしようとした時だ。ぐったりとしていた妖精がピンク色の鱗粉を撒き散らしながら、勢いよく飛翔した。
「な?! おい、待て!」
そいつは山へと続く方向に飛んでいった。
「ごめん、お婆ちゃん!」
俺は祖母に一言断りを入れて追いかける。
何故急に飛び立ったのだろうか。しかも、よりにもよってこの方向は母さんがいる場所だ。
「はあ、はあ」
五分程追いかけて、俺は母さんの墓へと辿り着く。妖精の姿を探すと、ある一本の木を囲むように飛び回っていた。
「な?!」
何の因果だろうか。俺の目に映るのは一本の桜の木。俺が妖精を憎むようになった、全ての元凶だ。
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