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ゆでたまごがつるんときれいに剥けたので、写真に撮ってルイくんに送った。
ルイくんからの返事は、夜に来た。
「きれいだね」
「いま? 返事遅くない? たまご、腐っちゃうよ」
って送ると、今度はすぐに。笑顔が溶けてくような絵文字が届いた。
ルイくんは、私の元同級生だ。でも高校に入ってすぐに、いなくなった。
ルイくんとは席が近くて、入学したての頃は、よくしゃべっていた。きれいな顔立ちで、かっこいいな、と思ったのでSNSで調べてみたら、ルイくんも同じSNSをやっていて、そしてネット上でつながって、三年生になった今もこうしてやりとりしている。
ルイくん、どうして学校来ないの、今何してるの。
いつか聞いてみた時、一週間かそれくらいしてから返事が来た。高校は退学した、と言うのだ。
「何で?」
すると、ルイくんは言うのだった。
「何か、違うなって、思ったから」
え、って思って、
「大学とか、どうするの?」
って思わず聞いたら、それに対する返事は来なかった。
私は、大学に通うつもりでこの高校に入学した。この高校は、大学への進学率が高かったからだ。みんな同じ気持ちでここに来ていると勝手に思い込んでいたけれど、そうでもなかったのかもしれない。
「じゃあ、今何してるの?」
「散歩してる。あとカメラで、写真とか動画とか撮ってる」
「何で?」
「家にいると親が怒るから」
「で、散歩してるの? 一日中?」
「散歩だけじゃないって。いろいろ探して撮ってる。見てるだろ。テクテク」
「テクテク」というのは、写真や動画などを投稿して共有できるSNSのことだ。これで、ルイくんと私も今つながることができている。だから写真も、動画も全部見たし、知ってる。ルイくんの映像が沢山の「イイネ」、つまり見た人からの拍手のようなものをもらっていることも。
ルイくんの映像は、友だちとか私のまわりの人が投稿するものとは、少し違った。
一人も人が出てこない。
地面に落ちたマスクだとか、カーテンがゆらゆら揺れる様とか、青空に飛ぶ飛行機のきらめく機体だとか、そういうものが延々と連なる。
桜の花が「がく」ごと落ちて、小花模様のアスファルト。
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