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何?
だから、何なの?
って、正直私はルイくんの一日の成果を下に見ているところが、ある。だって私はルイくんと違って、やりたくないことも沢山こなしながら、やりたいこともやっているからだ。授業受けたり。宿題やったり。塾にも通って。帰り道の電車でフラフラになりながら、スマホの無料アプリで写真を加工して、「テクテク」に写真を上げている。
それなのに私がもらう「イイネ」より、やりたいことをやってるだけのルイくんがもらう「イイネ」の方がずっと多いのは、何か、納得いかないなあ。って、正直思う。まあ、私が上げている写真は、主に友だちや知り合い向けのものだから、別にいいんだけど。
ルイくんは、何のために写真を撮るのだろう。何のために。誰のために。
私は、ルイくんの映像を流し見ることだけは、どうしてもできない。
例えば道に落ちたマスクが、揺れるカーテンが、ルイくんのほんとうの「声」のような気がして、私は息をひそめてその「声」に耳を澄ますのだ。
ルイくんを、もっと知りたかったから。
三年生になって、志望校もだいたい定まり、私は塾の日数を増やした。まとまった時間勉強をやるようになり、そうすると、だんだん勉強の方が楽しくなってきて、あんまり「テクテク」に写真を上げることがなくなってしまった。
でもルイくんは、相変わらず毎日のように写真や動画を投稿していた。私は塾の帰り道、眠る前の夜話を聞くように、ルイくんの映像を眺めていた。飛び立つ鳥。水面の濁り。校舎から流れてくるポップソング。
いつの間にか、ルイくんの投稿には私の知らない人たちからコメントがついて、ルイくんは「テクテク」で音の出ない会話を楽しむようになっていた。この人は、多分大人。この人は、同世代くらいかな。この人は、どんな人だろう?
私だって少しはやりとりするけれど、全然知らない人となんて本当に時々のことなのに、ルイくんとその人たちは、まるで友だちみたいだ。ルイくんと私、生きる世界が違ってきたのかな。
ルイくんは、スマホの内側で。
私は、外側で。
それぞれで生きるように、なっていくのかな。
ルイくんが東京の街で、「テクテク」の仲間と写真展を開くと知って、私はすぐに連絡した。
「その人たち、大丈夫なの?」
すると、ルイくんはすぐに返事をくれた。
「大丈夫だよ」
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