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そして、火曜日。
俺は鬼のように仕事をこなし、部下たちに今日は絶対にミスなく残業なく上がるよう強制命令を出し、無事に定時で全ての業務を終わらせた。
「笹沖さん、今日なにかあるんですか?笹沖さんが残業なしで、なんて言うの珍しいから皆びっくりしてましたよ」
「ああ、ちょっとな。でもやっぱり、俺の部下たちは優秀だな。お陰で助かった」
「えっ?や、いえ、そう言ってもらえると照れるじゃないですかぁ~、ねぇ?」
部下のひとりがそう言うと、他の奴らも少し照れながら頷いている。俺は、そんな部下たちを見ながら、「じゃあお疲れ様」と言って支店を出た。
「おかえり、笹沖」
ガチャ、と扉を開けたら竜ヶ崎が出迎えてくれた。疲れただろう?と言いながら、自然と俺の鞄を持っていく。
「…………竜ヶ崎」
「?どうした。夕飯用意してあるぞ」
「……食べたい。けど、まずはお前を食べたい………」
「!?は?ちょっ……おい!」
ガバッと竜ヶ崎に抱きついてそのままキスした。竜ヶ崎は最初嫌がるそぶりをしたが、後頭部を固定して深く舌を絡ませると大人しくなった。
「…………っ、なにか、あったのか」
「……ちょっと部下が優秀で。……ばっちり定時で帰れた」
「……?いいことじゃないか」
「うん。お陰で早くお前に会えた」
もう一度、深いキスをすると段々竜ヶ崎の漏れ出る声が甘くなっていく。
「……シャワー浴びてくるわ。一緒に行く?」
「はっ?い、いや……俺は」
「お前昔好きだったじゃん。風呂場でするの」
俺のその言葉に、顔を真っ赤にする竜ヶ崎を見て、俺は問答無用で奴の手をとり、浴室へ向かった。
*****
学生のときは金がなくて、ふたりで小さなおにぎりを作って食べるだけの日もあったな。
それが今や、ふたりでそこそこの店に行けるようになった。社会人の10年はすごい。
「………さ、笹沖……」
「ここでいれねぇから、安心しろって」
「………いや、だけど、」
「期待してたんじゃねぇの?お前も。固くなってる」
キスの合間に、竜ヶ崎の服を脱がせ、下に触れる。ビクッと震える身体がかわいい。
「今日、なにしてた?」
「……昼、近くの定食屋で食べて……、買い物、して……ここに来た」
「へぇ」
「……一通り、掃除と、夕飯作りはしたが……他になにかあったか?……んっ、」
下着も脱がせ、ぐっと下の方をつかんでやると、「あっ」という竜ヶ崎の声がした。
そのまま浴室内に入り、シャワーを浴びようとしたが、浴槽が閉まってる。
「って、あれ?お湯たまってんじゃん。やってくれたの?」
「……もうすぐ着くと、メッセージがあったから……」
「さすが。デキる男だな。なら入ろうぜ」
とぷん、と足からお湯に入った。心地よい温度だ、身体が癒されていく。
「竜ヶ崎?」
「………入れる、か?ふたりで」
「……ちょっとせまいけど、くっつけばいけるだろ、来いよ」
ためらう竜ヶ崎にそう言い、中に入らせた。
水面が上がって、お湯が外に流れ出る。
「おい、こっち」
「え」
「ここ、俺の膝座って向こうむけ。その方が余裕ある」
「……………」
「だから今更恥ずかしがるなって」
ザバっとお湯の音がする。
俺は、竜ヶ崎を後ろから抱き締めるように抱え込み、うなじにキスした。
「……あ!?おい、やめ……」
「無理。俺、今日一日、お前に触るために頑張ったんだから」
「……ばか……じゃないか」
「お前は?違うの」
竜ヶ崎の腹周りをぐっと力を押すと、耐えきれない奴の声が上がる。
「んん……さ、笹沖……」
「あ?」
「……あ、当たってない、か?」
「当たってる」
「……っ、どうするんだ」
「え?もしかしていれていいの、ここで?」
「…………いや、つけてないだろ……」
「そりゃな。でも、なに?期待した?」
「……あっ?……ぁっ、!」
うしろから奴に手を伸ばし、強く動かす。
お湯の熱さなのか、こいつの熱さなのかわからないけど、そこは固さを増してビクビクしている。
「さっ……笹沖っ、ここ、風呂……」
「うん。わかってる。出していいぞ、またお湯はりなおせばいいし」
「ん、……っ、っ、」
「俺しか聞いてないから、声抑えなくていいって」
「……んな、こと……っ、あっ、や、ぁっ」
「純……っ、いれなくても、お前の声聞いてたら、イけそう」
「!?あ、笹沖………っとも、ともかず……っ」
後ろから押し付けるように。
右手で奴をつかみ、左手で奴の腰を上下に揺らした。お湯の音、浴室で、竜ヶ崎の声はくぐもってより甘く聞こえた。
「……智一……っ」
「はっ、……一歩間違えたら、お前のなか入りそう」
「んっ、ん!だ、出したい……っ」
「うん、俺も」
竜ヶ崎がこちらをちらっと見た隙に、顔を近づけキスしながら、下半身に走る快感をふたりで感じあった。
ーーああ、だめだこれ。気持ちよすぎ。
出し終わって肩で息する竜ヶ崎の後ろからぽすっと顔を埋めるようにしたら、竜ヶ崎が「お前も、……いけた?」と聞いてきた。
「いけたよ。ドロドロ。風呂場で良かった」
「………浴槽だけどな?洗うの大変……」
「とりあえずシャワーして出るか。その間にお湯抜いて、洗剤ぶちまけとけば大丈夫だろ」
「……あ、そう………」
そしてふたりで改めてシャワーで身体を流し、風呂場を出た。
「俺、夕飯用意してくるから」
「わかった。じゃあ浴槽流しておく」
「ああ」
「純」
「?」
「飯食べたら、ちゃんとベッドで抱き合おう」
そう言うと、また竜ヶ崎の顔が赤くなる。
そして、「バカ」と一言残して、奴は部屋に歩いていった。
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