心の闇

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心の闇

 正道は昼休み、休憩室で門脇商事のテレビを見た。 『殺人未遂。村松圭吾を逮捕。面接官の女性をナイフで切りつけ。パーソナリティに異常を持つ人物だった。彼の心の闇とは』 「危なかったね。丸山さん。その場にいたんでしょ」 「ええ。まぁ」  上司にあたるはずだった宇崎恵子さんが全治1か月の重傷を負い、代わりに桜川さんが担当になった。  圭吾の心の闇とはどんなものだったのだろう。直接見ていないから分からない。警察の事情聴取でもそう言った。  統合失調症の急性期で、家族にも見放された人が9割以上、殻に囲まれ、顔も見えない姿になったことは見たことがある。  その人には、精神科医や看護師がついていた。  もしサポートが全く無ければ。  卵が完成し、闇の獣が誕生するのかもしれない。  サポートさえあれば。  犯罪者には変わりがないけれど、正道は、何だか村松圭吾が気の毒で仕方なく思えてきた。                                 完
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