6人が本棚に入れています
本棚に追加
心の闇
正道は昼休み、休憩室で門脇商事のテレビを見た。
『殺人未遂。村松圭吾を逮捕。面接官の女性をナイフで切りつけ。パーソナリティに異常を持つ人物だった。彼の心の闇とは』
「危なかったね。丸山さん。その場にいたんでしょ」
「ええ。まぁ」
上司にあたるはずだった宇崎恵子さんが全治1か月の重傷を負い、代わりに桜川さんが担当になった。
圭吾の心の闇とはどんなものだったのだろう。直接見ていないから分からない。警察の事情聴取でもそう言った。
統合失調症の急性期で、家族にも見放された人が9割以上、殻に囲まれ、顔も見えない姿になったことは見たことがある。
その人には、精神科医や看護師がついていた。
もしサポートが全く無ければ。
卵が完成し、闇の獣が誕生するのかもしれない。
サポートさえあれば。
犯罪者には変わりがないけれど、正道は、何だか村松圭吾が気の毒で仕方なく思えてきた。
完
最初のコメントを投稿しよう!