Phase 02 疑惑の死体

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 絢奈は、ユースタグラムで一連の事件の関連動画を漁るように見ていた。 「いくらセンセーショナルな事件だからといって、動画をアップロードするってどういう神経なんだろうか。僕には考えられないな。それに、撮影者が見せしめに殺されたらどうするんだ。そういえば、AKIRAって有名なオカルト系ユースタグラマーだったな。まさか豊岡に住んでいるとは思ってなかった」  そんな中で、関連動画で気になる動画を見つけた。 「あれ? これって亜紀さんの入水自殺の瞬間なんじゃ」  その動画に映っていた女性は、明らかに間宮亜紀だった。彼女は雪が降りしきる円山川の中へと入っていく。当然だが、周りで止める人はいない。 「えーっと、アップロードしたユーザーは……えっ? 杉本先生? どういうことなの???」  杉本先生とは、絢奈の中学生の時の担任の一人である。名前は杉本恵介(すぎもとけいすけ)といい、担当教科は数学である。そして、情報部の顧問として絢奈に対してプログラミングの極意を叩き込んだ恩師と言っても過言ではない。 「そういえば、あの事件以来連絡取ってないな。一度メッセージを送ってみるか」 【杉本先生、久しぶりです。ユースタグラムにアップロードされた動画を見ました。先生もまさかアレが間宮家連続不審死事件の発端だとは思いもよらなかったでしょう。一度、返事をくれないでしょうか。まあ、返事をする気が無かったら別に返信しなくてもいいんですけど 神無月絢奈】 「これでよし。後は返事を待つだけだな」  そう思いながら、絢奈はスマホで音楽を聴き始めた。スマホから流れていたのは、hitomiの『プラスティック タイムマシーン』だった。  何曲か聴き終わった後、杉本先生から返事が入ってきた。 【絢奈ちゃん、君と連絡を取るのはあの事件以来だな。あの時は僕が救わなかったら絢奈ちゃんは死んでいたことになっていた。それはともかく、例の動画は確かに間宮亜紀さんの入水自殺の瞬間だった。あの時円山川でソロキャンプをしていた僕は、彼女の入水自殺を止めようとしたんだけど、結局聞く耳を持たずに円山川の中へと入っていった。絢奈ちゃんがあの事件に首を突っ込んでいるんだったら、その後の事は言うまでもないな。本来なら絢奈ちゃんと直接会って話がしたいんだけど、生憎奥さんの実家がある富山に帰っているんだ。ゴメンね。まあ、会う機会があったらまた連絡するからよろしく ケイスケ】 「そうか。富山にいるんだったら仕方ないな」と絢奈は思った。でも、あの動画のアップロード主が本当に杉本先生だと分かって絢奈は少し安心した。 「あとは……仁美さんからの連絡待ちだな。何かいい収穫があれば良いんだけど」  しかし、絢奈の耳に入ってきたのは良いニュースではなく悪いニュースだった。 【絢奈ちゃん、結局由香さんを護ることはできなかった。これは刑事としての責任の無さを痛感している。それよりも、大変なことになっちゃった。重要参考人にしていた藤崎亮さんが遺体として見つかってしまった。これはまだニュースになっていないんだけど、直に速報として入ってくるはず。死因は恐らく毒殺だと思う 西田仁美】 「マジかよ……」絢奈は思わず声を漏らしてしまった。そして、スマホにニュース速報が入ってきた。 【豊岡市連続不審死事件の重要参考人である藤崎亮(35)が死亡 死因は毒殺と見られる】
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