Phase 00 封印された事件

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Phase 00 封印された事件

 1959年12月、ある女性が兵庫県の円山川に身投げをした。女性は「もういやや」と言いながら入水自殺を図った。それだけならよくある悲劇として処理されるのだけれど、悲劇は連鎖して一家に襲いかかってくる。  女性が自殺してから16年後の1975年。入水自殺した女性の妹が、病院のベッドで首を括って命を絶った。彼女は、命を絶つ数日前から「頭が痛い。精神病院へ行かないと」と訴えており、もしかしたら気が触れたのではないかと言われていた。最初はアパートでガスを吸って死ぬつもりだったのだが、間一髪で阻止。それから病院に入院していた。しかし、死神は彼女に襲いかかってくる。ベランダに出ると「このまま飛び降りて死んでしまうかもしれない」と錯乱。看護師たちによってなんとか取り押さえられたのだけれど、矢張り彼女は死神に魅入られていた。ある日、彼女は病室の通風孔にスカーフをぶら下げて首を括る。見回りに来ていた看護師の蘇生も虚しく、彼女は即死だった。  死の連鎖は止まらない。ある夏の日、姉妹の祖母は外に出て、何を思ったのかそのままマッチに火を点けて自分を燃やした。燃え盛る祖母を見つめる祖父の目に何が映っていたのかは、善く分からない。そして、祖母が焼死した間もなく、姉妹の祖父と父親も首を括って亡くなった。  ――これが俗にいう「城崎一家蒸発事件」である。  ある女性は、興味本位でこの忌々しい事件を調べていた。 結局のところ、なぜ一家が死神に魅入られたのかは分からない。けれども、家の裏にあった「五輪塔(ごりんのとう)」にその秘密が隠されているのではないかと思って現地に向かった。しかし、そこにあったのはただの空き地であり、大した手掛かりを得ることは出来なかった。 「結局、この事件は闇に葬られたのか。まあ、地元でもこういう事件があったということは確かだな」  女性は、黒いライダースジャケットを(ひるがえ)してバイクに跨がり、その場を去っていった。  それから数年後、この一家蒸発事件をトレースしたような事件が実際に発生するとは、当然彼女は知らない。
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