Phase 01 消えた姉妹

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 それから、豊岡という小さな街というか、更に小さな集まりである間宮家にマスコミが殺到するようになったのは美和が謎の死を遂げてからだった。美和が亡くなったのは、亜紀の遺体が見つかってから約2週間後だった。亡くなる1週間前に「頭が割れるように痛い、病院へ行きたい」というメッセージを由香のスマホに残していたところから死因は急性くも膜下出血、もしくは精神に何らかの異常を来たしたものと判断された。しかし、SNS上での死因は自殺と思われていた。美和の死に関して不審な点が多すぎるからである。  兵庫県警捜査一課の西田仁美(にしだひとみ)は、一連の事件に関して文字通り頭が痛かった。頭を抱えつつ、仁美は美和の母親である由香に対して質問をする。 「それで、本当に美和さんは頭が痛かったんですか?」 「はい。娘は市販の頭痛薬を飲んでいたので恐らく頭痛を患っていたものと思われています。しかし、突然発狂したように首を括って死んでしまったので正直私も混乱しています。刑事さんに話せる事は以上ですね」 「なるほど。ありがとうございました。一度署の方に戻りますね」 「わざわざすみませんでした」  豊岡でこんなセンセーショナルな事件が発生するのは、小学生だった頃に発生した「箕面(みのお)トラック運転手殺人事件」以来だろうか。仁美はそう思っていた。「箕面トラック運転手殺人事件」でもそうだったが、豊岡という村社会は小さすぎるが故に大きな事件が発生してしまうとその時点で住人全員が犯人に対して石を投げる。それぐらい豊岡における世間体は狭いのだ。
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