Phase 01 消えた姉妹

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 仁美は、豊岡北警察署に設置された捜査本部へと戻っていった。捜査本部の中で、先輩刑事である鶴丸龍巳(つるまるたつみ)が待っていた。 「仁美ちゃん、お疲れ様。由香さんから何か聞き出せた?」 「ううん。全然聞き出せない。亜紀さんが入水自殺を図ったのはまだ分かるんだけど、どうして美和さんまで遺体で見つかるのかがアタシには分からない。ところで、豊岡ってスタバ無いんですね」 「そうそう。僕も一回研修で豊岡に来たことがあったんですけど、スタバも無ければ快活クラブもない。まあ、田舎だから仕方ないんだろうけど、もうちょっとまともなチェーン店を増やしてほしいって思うな。まあ、仕方がないからマクドのてりやきバーガーで妥協したんだけど。これ、仁美ちゃんの分だから」 「ありがと。そしていただきます」  そう言いながら、仁美はてりやきバーガーを頬張った。そして、鶴丸刑事は仁美に対して話を続ける。 「それで、城崎で起きた一家蒸発事件と関係があるってどういうことなんですか?」 「これはアタシの友人の入れ知恵なんだけど、昔城崎で家族が全員消えた事件があったんです。最初に四女の入水自殺から始まって、次に五女が病院のベッドで首を括って死亡。そして、最終的に夫婦が家の中で焼身自殺を図った。一部のオカルト好きやミステリ作家の間では有名らしくて、当然その友人も事件を知っています」 「なるほどなぁ。こんな田舎町でも大きな事件って起きるんですね」 「まあ、事件があるから刑事という仕事があるんですけどね。特に捜査一課は殺人事件を専門に扱いますから、兵庫県内で殺人事件が発生すると、アタシたちの出番になっちゃうのは当たり前の話じゃないですか。今回の間宮家で発生した事件もアタシたちがいなければ恐らく迷宮入りでしょうね」 「それはどうかな」 「大丈夫。アタシが絶対解決させます」 「そうか。仁美ちゃん、自信たっぷりだな」 「そりゃ、生田署巡査時代にたくさん揉まれましたからね。特に今でも善太郎さんには感謝していますよ」 「古谷刑事なぁ。あの組織犯罪対策課の鬼刑事って、仁美ちゃんだけには優しいんですよね。もしかして、古谷刑事から恋愛感情とか抱かれているんですか?」 「それはどうでしょうか」 「コホン。とにかく、今回の事件の解決は仁美ちゃんに懸かっているから、捜査は慎重に頼むよ」  果たして、自分にこの事件が解決出来るのだろうか。仁美は正直不安だった。しかし、捜査の指揮を執るのは飽くまでも仁美ではなく上司の警部である。仁美は、警部からの指示を待ちつつ、鶴丸刑事から受け取ったホットコーヒーを飲んでいた。
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