Phase 02 疑惑の死体

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Phase 02 疑惑の死体

「被害者は間宮賢治。年齢は58歳。地元の建築会社で大工として働いていた。死因はガソリンをかけられたことによる焼死と見られている」  林部警部の状況報告を、仁美はメモを取りながら聞いていた。それにしても、恐れていた事態が発生してしまった。城崎一家蒸発事件において夫婦は焼死体として発見されていたが、今回焼死体として発見されたのは姉妹の父親である間宮賢治だけである。つまり、この時点で一連の事件の被疑者は母親である間宮由香、祖父である間宮光雄、そして祖母である間宮幸子の3人に絞られる。しかし、3人共それぞれアリバイがあった。由香には「夕飯の片付けをしていた」というアリバイがあり、光雄は「大河ドラマの最終回を見ていた」というアリバイがあり、そして幸子には「編み物をしていた」というアリバイがあった。  焼死体が見つかった場所は円山川から見て西側にある宮島地区である。間宮家があるのは下陰地区なので、事件現場から約1kmは離れている計算になる。それにしても、なぜわざわざ円山川の近くで賢治を殺害したのだろうか。目立たない場所で殺害するためなのか。それとも、入水自殺を図った亜紀と同じ目に遭わせるつもりだったのだろうか。仁美は、そんな事を思いながら考え事をしていた。
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