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仁美は、チェーン店の居酒屋で鶴丸刑事と話をしていた。
「それにしても、最後に聞き込み調査を行った男性は、なんだかテンションが高かったなぁ。基本的に兵庫県警で働いている以上、そういう性格の人と接することがないから、アタシは疲れたよ」
「あまりにも異様なテンションの場合、尿検査を行ったほうが良いんじゃないんですか?」
「そうは言うけど……」
「まあ、これで事件解決に向かって一歩前進だと思えば良かったと思いますよ?」
「だよね。今まで色々と悩んでいたけど、あまり悩みすぎると頭にも身体にも悪いですからね。もちろん、アルコールの摂取もあまり良くないですけど」
「今日は頑張ったから、お疲れ会だと思って」
テーブルの上には、地元で獲れた魚の刺し身が置かれていた。神戸育ちの仁美にとって、日本海の魚というのは新鮮に見えた。
「鶴丸くんって、こういうのは食べたことあるの?」
「実を言うと、僕って日本海育ちなんだ。豊岡じゃなくて香住っていう場所なんだけど、兵庫でも有数の漁港があるんだ。ほら、冬になると蟹の漁獲の様子がニュースで伝えられるよね。僕の父親もそういう仕事をしているんだ」
「なるほどねぇ。それで、どういう経緯で神戸に来たの?」
「まあ、『就職するなら神戸がいい』という思いが強かったからね。父親の仕事を継ぐという選択肢もあったんだけど、僕は3人兄弟の末っ子だったから、別にいいかなって思って。ちなみに長男は父親の手伝いをしている。だからこの時期になると訳ありの蟹が大量に送られてくるんだ」
「へぇ。羨ましいなぁ」
「もし良かったら、仁美ちゃんにもあげるよ」
「ありがと。でも、この事件を解決してからにしましょう。その方がアタシも気が楽だし」
「そうだな。まずは間宮家連続不審死事件を解決させることが先決だからな」
結局、その日のお疲れ会は時計の針が12時を回るまで続いた。ビジネスホテルに戻った仁美は、シャワーを浴びて今までの事件の整理を行うことにした。
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