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結局、仁美による真理子への取り調べはそこで終了してしまった。
「西田刑事、真理子さんから何か聞き出せましたか?」
「まあ、色々と。亮さんのこととか、自分がパティシエを目指していたこととか。まあ、被疑者には黙秘権というものがあるから自分が一連の事件の犯人であるかどうかまでは口を割りませんでしたけど……」
「そうだ。これ、藤崎家の間取り図です」
鶴丸刑事は、仁美に間取り図を手渡した。
「結構広い家なんですね」
「そりゃ、豊岡でも有数の名家ですからね。それで、間取り図の中に気になるモノを見つけたんです」
「一体何でしょうか?」
「この家に似つかわしくない、やけに広い部屋があるんです。もちろん、亮さんの殺害現場とは別の場所ですけど」
1階の間取り図は、和室が2つと仏間が1つ、そしてリビングキッチンとバスルームで構成されていた。ここだけを見ると、よくある大家族の家である。しかし、問題は2階にあった。
「それで、2階の間取り図なんですけど、3人の子供の部屋と両親の寝室があるのは分かるんですけど、間取り図から見て右側に謎のスペースがあるんです。なんというか、この家に似つかわしくないスペースなのは確かです」
「あっ、本当ですね。まあ、武家屋敷だったらこれぐらい当たり前だと思うんですけど……」
「ですよね。千尋さんからその部屋の鍵を貸してもらったので、今からこの部屋に入ろうと思っているんですけど、西田刑事は覚悟が出来ていますか?」
「もちろんです」
こうして、仁美と鶴丸刑事は2階の大広間へと向かうことになった。
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