Phase 01 消えた姉妹

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 間宮亜紀には藤崎亮(ふじさきりょう)という婚約者がいた。藤崎家は地元でも有数の実業家で、亮もプログラマーとして豊岡という寂れた田舎町をITで盛り上げようと努力をしていた。そして、結婚の日取りが決まって数週間も経たないうちに、間宮亜紀という人物は自らの命を絶つことになった。亜紀の自死の原因は自分にあるのだろうか。亮はそう思っていた。しかし、間宮家も豊岡ではそれなりに有名な家系である。当然、結婚にあたって両家からの了承は得ている。それなのに、なぜ間宮亜紀という人物は自らの命を絶ったのだろうか。SNS上では、面白がった人々によって不審死に対する考察が白熱していた。議論の中で浮かび上がっていたのは、自殺説はもちろん、他殺説や発狂説、更には発狂説なんてものもあった。  そんな中で、間宮家では祖父母を含めた家族会議が開かれることになった。間宮家は祖父の間宮光雄(まみやみつお)、祖母の間宮幸子(まみやさちこ)の元で育てられた間宮賢治という父がいて、香住の漁師の娘だった荒川由香(あらかわゆか)が間宮家に嫁ぎ、間宮由香として名を改めて賢治と結婚した。賢治と由香の間には、亜紀と美和という2人の娘がいた。姉の亜紀は発達障害を抱えながらも頭が良く、アマチュア小説家としてインターネット上に小説を連載していた。その傍らで溝淡社(こうたんしゃ)に原稿を送っているのだが、中々自分の実力を認めてもらえずに苦悩していた。妹の美和は子供の頃からスポーツ万能で、中学生の時に陸上選手の道へと進んだ。高校を卒業して、そのまま神戸の医療機器メーカーの陸上部に所属。2021年の東京オリンピックでは短距離走で8位入賞も果たした。そんな美和も今年で31歳。先日、陸上選手としての選手生命にピリオドを打ち、実家のある豊岡へと戻っていた。そして、母校の高校のスペシャルコーチに任命され、豊岡における陸上選手の育成に力を入れようとしていた。  亜紀を陰キャとしたら美和は陽キャであり、性格は正反対である。しかし、実際に意見の違いでぶつかり合う事があるかと言えばそうでもなく、むしろ仲の良い姉妹として間宮家の未来を担っていた。
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