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絢奈が意識を取り戻したのは、倒れてから約2時間後だった。裸のままで床に横たわっていたので、血だらけになった絢奈はシャワーで血を洗い落としてから部屋着に着替えた。
「僕、一体何をしていたのだろうか。リスカをしてしまった事までは覚えているんだけど、倒れる前に『何か』が見えたような気がする。男性と女性が裸で交わって、心臓が脈を打つように蠢いていたな。そういえば、呪文というか、真言を唱えていたような……拙い! このままじゃ仁美さんが危ない!」
絢奈は急いで仁美のスマホに電話をかけるのだが、案の定「おかけになった電話は電波の届かないところにあるか、電源が切れているためお繋ぎできません」という無機質なアナウンスが流れていた。
「遅かったか……」
絢奈は、思わず部屋の壁を殴った。鉄筋コンクリートなので、殴ったところで自分の拳が痛いだけなのは分かっていたのだけれど。
仁美が件の部屋からリビングルームに戻ろうとした時、階段の踊り場で痺れるような感覚に襲われた。
「西田刑事、危ないッ!」
仁美は階段から転がり落ちて、そのまま気を失った。鶴丸刑事はそれがスタンガンだということに気づいていたのだが、遅れてスタンガンを当てられてしまった鶴丸刑事は体を動かすことが出来なかった。
そして、男性とも女性とも取れる中性的な声色で、2人にスタンガンを当てた人は話しかけた。
「――どうやら、僕の家の秘密を知ってしまったみたいですね」
そして、2人は藤崎家の離れにある洋風の屋敷に閉じ込められることになった。
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