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「神無月さん、ここが好きなの?」
「ああ。ここにいると落ち着くんだ。僕はこういう館に憧れを抱いていたからな。それより、ここの壁だけ色が変わっているのはどういう事だ」
「うーん……僕にも分からない。でも、僕の家って但馬でも有数のからくり職人の家系って聞いていたから、何か隠し部屋でもあるのかも」
「じゃあ、押してみるか」
「僕の記憶が正しければ……これだな」
絢奈がその壁を押すと、目の前に隠し通路が現れた。
「この通路から抜け出したら、恐らく出る先は藤崎家の母屋の門の前だ」
母親の胎内にある産道を潜るように、狭くて暗い通路を抜けていく。やがて、通路の先に光が見えてきた。光の方へと向かうと、藤崎家の母屋の門の前に出た。
「ふう……」
「ぜぇぜぇ……僕ってそんなに体力ないんですけど」
「ああ、すまない。とにかく、近くのファミレスに向かいたいと思ったけど、今の時刻は午前1時だな。残念ながら、ファミレスの閉店時間だ。そうだ、僕の実家へ行き先を変更するか」
「実家?」
「ああ、実家だ」
絢奈はバイクを走らせて、自分の実家へと向かうことにした。本当なら3人共バイクへ乗せるつもりだったのだが、バイクへの2人乗りは当然ながら、3人乗りも道路交通法違反なので、鶴丸刑事は依然意識を取り戻さない仁美をパトカーに乗せて、絢奈の実家へと向かった。
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