Phase 04 絢奈と仁美と鶴丸刑事の長い1日

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Phase 04 絢奈と仁美と鶴丸刑事の長い1日

 絢奈は、夢を見ていた。それは、過呼吸を起こした時に見た幻覚の続きだった。  壁に、荼枳尼天の曼荼羅が掛けられている。強烈なお香の匂いがする中で、複数の男女が、脈を打つように交わっている。女性は喘ぎ声を上げ、そして男性は荒い息遣いで真言を唱えている。一つの生命体になっている男女の中心には、黄金の髑髏が置いてある。やがて、男性の動きが激しくなる。髑髏には、赤い液体のようなモノが注がれていた。 「神無月さん、あなたも飲んでみますか? この液体を飲むと、不老不死を得ることが出来ますよ?」 「いや、僕はそういう趣味はない。むしろ、今すぐにでも死にたいぐらいだ。それに、ここは一体どこなんだ」 「まあ、なんというか……僕の目指していた世界かな?」 「■■くんって、そういう世界を夢見ていたのか。僕は見損なったな」 「僕が、この世界の神になるんだ。それは、おじいちゃんから言われていたことだからね」 「勝手にしろ。■■くんはもうすぐ逮捕される」 「それはどうかな?」  外で、パトカーのサイレンが鳴り響いている。恐らく、■■は逮捕されるのだろう。しかし、これは飽くまでも夢の世界である。現の世界に対する影響なんて、ある訳がない。■■は、拳銃を構えた。 「残念だったな。刑事さんと神無月さんには、ここで死んでもらうよ」  乾いた銃声が鳴り響く。銃弾が、絢奈の心臓を貫く。 「ぐはッ」  絢奈の心臓の鼓動が、段々と遅くなる。意識が、朦朧とする。そんな事はお構いなく、■■は拳銃を発砲する。仁美は血飛沫を上げ、鶴丸刑事はそのまま蹲るようにして倒れた。 「この世界は、僕だけのモノだ」  高らかに笑い声を上げる■■は、意識が遠のく絢奈にとって嘲笑うようにも見えた。  そして、そのまま絢奈の心臓の鼓動は止まってしまった。
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