Phase 04 絢奈と仁美と鶴丸刑事の長い1日

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 三途の川が、流れている。絢奈は、死んだのだ。これから、奪衣婆に服を奪われて、死後の世界へと渡るのだろう。 「いくら奪衣婆と雖も、このライダースジャケットは高かったからな。なんとか奪われる訳にはいかない」 「それはどうかしら」  奪衣婆には、見覚えのある女性がいた。 「さ、沙織ちゃん???」  西澤沙織(にしざわさおり)。絢奈の最大にして唯一と言ってもいい親友である。絢奈と沙織は色んなところで趣味が合うので、互いの事を「もう一人の自分」として見ていた。ただし、沙織は陽キャで絢奈は陰キャなのだけれど。どうやら「同級生連続失踪事件」で殺害された後、死後の世界を彷徨(さまよ)っていたようだ。 「それにしても、どうして死んじゃったの?」 「まあ、事件に巻き込まれて」 「アヤナン、いっつも事件に巻き込まれてるなぁ。どっかの見た目は子供で頭脳は大人の探偵じゃないんだから」 「まあ、事件に巻き込まれては殺されかけて生き返ってるんだけど、流石に今回はダメだ」 「それはどうかなぁ。アヤナン、結構しぶといところあるじゃん」 「まあ、リスカをしても三途の川には投げ飛ばされているからな。結局意識が戻って元の世界に戻るんだけど」 「そうね。自分の胸に手を当ててみなさいよ」 「どういう事だ」 「騙されたと思って」  絢奈は、自分の胸に手を当ててみた。僅かながら、心臓が脈を打っている。 「まだ、僕は死んでいないのか」 「そういうことみたいね。アヤナンはまだ、三途の川を渡る資格が無いみたい。まあ、もうちょっとだけ生きてみたら良いんじゃないの?」 「そうだな。沙織ちゃん、ごめん」 「謝らなくても良いのよ。ほら、病室のベッドの上でみんなが待っているわ」 「じゃあ、僕はこれで」  ――それから、絢奈は三途の川から去っていった。
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