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間宮家というのは、親が介護しやすいようにと二世帯住宅になっている。つまり、祖父母の家と間宮賢治の家は同じ家の中にある。
水炊き鍋を囲む中で、由香は美和に話しかけた。
「そういえば、美和の友達にそういうのに詳しい子がいたわね。確か、名前は……忘れちゃったな。最近、歳のせいか物覚えが悪いから……」
「あっ、絢奈ちゃんのこと? うーん、最近あの子とは連絡取れてないのよねぇ。元々コミュ障で人と接するのが苦手だから、いつどこで何をしているのか分からないのよね。まあ、イチかバチかスマホで連絡入れてみるよ」
そう言って、美和は友人のスマホにメッセージを送った。
【絢奈ちゃん、元気? 例の事件の事はもう知ってるかな? 絢奈ちゃんが良いって言うんだったら、力を貸してもらえないかな。報酬は出すから ミワ】
「絢奈ちゃんがどこで何をしているのか分からないけど、既読が付けば良いかな」
美和の思いに反して、既読は直ぐに付いた。そして、美和のスマホの通知音が鳴り響いた。
【美和か。もちろん、君の姉が命を絶ったことはニュースで知った。しかし、本当に城崎一家蒸発事件と関係があるのか? 事件のきっかけと発生場所が同じなだけで、ただのこじつけじゃないのかな。僕はそう思うよ。まあ、僕はそっちに戻る気はないし、自分の力で何とかするんだな。ああ、あまり事件に首を突っ込まないように。それじゃ アヤナ】
意外とドライな返事が絢奈らしいなと、美和は思った。それにしても、亜紀の自殺の理由が城崎一家蒸発事件と同じならば、次は自分の精神と命が危うい。美和はそう思った。
その日から、美和はお守りとしてウサギのぬいぐるみを握りしめて眠るようにした。こんなもの、気休めにしかならないのは分かっていたのだけれど。
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