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それから数日後、間宮家と藤崎家による互いの顔合わせを経て、結婚の準備はトントン拍子に進んでいた。亜紀にとって、第一印象で亮はとてもいい人に見えたのだ。結婚の日取りが進む中で、2人はこっそり裸の付き合いをするようにもなった。
ある夜、ベッドの上で亜紀は亮に話しかけた。
「ねえ、亮さんは私のことをどう思っているの?」
「まあ、基本的に変人だけど、気は優しいと思っている」
「変人?」
「亜紀は生まれつき神様に選ばれたから変人だと思っている。でも、神様から授かった才能を活かすも殺すも亜紀次第だ。もちろん、僕はその才能を活かすように応援しているよ」
「本当に? ありがとう」
「そうか。今日はもう遅い。寝ようか」
「寝る前に、少しお願いを聞いても良いかな」
「何だ?」
「少し、あなたと一つになりたいと思って。もちろん、ゴムは着けてよね」
亜紀と亮は、互いの舌を絡ませた口吻の後に、軋むベッドの上で一つの生命体になった。亮は、自らの心臓の鼓動に合わせるように激しく腰を振って、亜紀を喘がせる。亜紀の喘ぎ声は次第に大きくなり、そして絶頂に至った。
当然、生命の儀式の中で亮がどう思っていたのかは知らないし、亜紀がどう思っていたのかも知らない。けれども、この時点で亜紀の心の中である「迷い」が生じていたことに、亮は気づけなかった。そして、亜紀が円山川の中で自ら命を絶ったのは、生命の儀式が行われた翌日の、吹雪の夜だった。
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