軋轢

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軋轢

 「だから病院に行きなさいって!」 「ダルいから行きたくない、放っておいて!」 母と私の口喧嘩を仲裁するように、リビングのソファでくつろいでいた父が口を挟む。 「学校で何かあったのか?」 私はダイニングの椅子に座ったまま、無言で首を横に振る。 「中間テストの結果はあまり良くなかった。休めば休むほど勉強についていけなくなる。自分でよく考えなさい。母さんもそのくらいにして。責め立てて素直に言うことを聞く年齢じゃないんだよ、唯花はもう」 父の達観したような発言は母を苛立たせた。 「あなたはいつもそう!親として嫌な役目はぜーんぶ私に押し付けて理解者ぶって!家の事も全部私がやって、あなたは休日は趣味のテニス三昧。朝だってさっさと出掛けて洗濯も掃除もしない。料理なんて一度も作らない。だからストレスもなく、呑気なことが言えるのよ!」  母の凄まじい剣幕に、父は「また始まった」とげんなりした表情でリビングのソファから逃げるように立ち上がり、一階の奥にある書斎に籠ってしまう。母の怒りの矛先は強風に晒された風見鶏のように、今度は私に向いた。 「明日は病院に行きなさいよ!わかった?」 あまりの迫力に仕方なく曖昧に頷いて、私も二階の自分の部屋に逃げ込んだ。別にどこか具合が悪い訳じゃない。 ただ、休みたいだけなのに…。
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