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初恋は卵焼きの味
一目惚れなんて迷信だ。小学校四年生にして、妙に達観していた私はそう思っていた。
漫画やアニメの世界ならばそういうことがあってもいい。でも実際の恋愛なら、見た目だけで好きだの惚れただのなんてナンセンスである。恋をするなら、中身もかっこいい男でなければ論外だ。自分のクラスにもイケメンはいなくはないが、どいつもこいつも中身がアホでお話にならなかったのである。
やれ、カーテンにぶらさがって“ターザン”!だの。ゴミ箱の蓋を腰に持ってきて“スカート”!だの。しまいには廊下に消火器の中身をぶちまけて先生の雷を食らっている。まったく知能レベルが低くていけない。そういうのは低学年で卒業してろと言いたい。
――だから。いくらかっこいいやつでも、絶対私は好きになんかならないって思っていた。
そもそも、同年代の男なんて馬鹿ばっかりなのだ。
好きになるとしたら年上の、落ち着いた男性がいい。というか、そういう人にしか興味はない。クラス担任の冨士見先生の方がよっぽど恋をするに足るイケてる男性だ。
そう、思っていたのだけれど。
「初めまして。神代響です」
四年生の秋。転校してきたその男の子は、その周辺だけキラキラと輝いて見えたのだった。
ちょっと明るめの髪。中学生でもありそうな長身に、白くてきれいな肌、優しい笑顔。
ウソでしょ、と自覚して啞然とした。まったくどうかしている。教室で、最初の挨拶をされただけで。その子から目を離せなくなった自分がいたのだから。
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