息子の、とある成長期

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職場はすぐ決まったのに、保育園は全然決まらなかった。 近年、インターネットやテレビで待機児童問題が騒がれている。 この問題を初めて知った時、私は専業主婦だった。 「私には関係ない事」 当時は、その程度にしか考えてなかった。 状況が変わったのは、マイホームを購入してからだ。 今は、夫の収入だけで何とかなる。 問題は、将来訪れる子供の学費や食事量だ。 確実にお金がかかる。 そう考えただけで、私はゾッとした。 夫に相談する。 「働きたいと思う」 「子供はどうするの?」 夫から、予想通りの答えが返ってくる。 「保育園を探すわ」 「この御時世、簡単に見つかるのか?」 「何とかして見つける。見つけたら、そこで決めようと思う」 夫は腕を組み、しばらく黙る。 「分かったよ」 夫は反対しなかった。 だけど、ここからが大変だった。 認可保育園は、すでに働いている人が優遇されるため、事実上門前払いだった。 認可外保育園も思った以上に園児が多く、面接まで漕ぎ着けても、入園までに至らず。 ようやく決まったところは、マンション1階のテナントを改装して作られた小さな認可外保育園である。 少しだけ不満はあったけど、一生懸命探して見つけた保育園だ。 「息子が泣き叫ぶだけで、保育園休めるか」 息子の気持ちより、私の感情の方が上回っていた。
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