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「美雨、ホントに他人の恋を応援しているの?」
ある時、彩姫ちゃんが訊いた。
あたしはビックリした。
美雨ちゃんが嘘のことを言っているなんて、考えたこともなかった。
「うん。だって、みんな私の大切なお友達だもん」
美雨ちゃんは鈴の鳴るような声で答えた。
「でも、被ってたりするじゃん」
彩姫ちゃんは言った。
確かに、由理ちゃんの好きな人と、華絵ちゃんの好きな人は、同じ晴樹くんだ。
たしか、美雨ちゃんはどっちにも「応援しているよ」って言っていた気がする。
「その時は、二人とも恋が実って欲しいなって思ってる。無理だとしてもね」
美雨ちゃんはそう答えた。
カッコいいなって、思った。
「ふうん」
彩姫ちゃんは、それ以上は突っ掛からなかった。
「そうだ、彩姫ちゃん。彩姫ちゃんには好きな人、いるの?」
美雨ちゃんは訊いた。
堂々と訊くなぁって思った。
あたしだったら、絶対訊けない。
「いないよ」
彩姫ちゃんはすまして答えた。
「莉奈は?」
「えっ!?」
彩姫ちゃんは急にあたしに話題を振ってきた。
好きな人……。
誰だろう、考えたこともなかった。
他の人の好きな人はいっぱい知っているのに。
「わかんない」
あたしは答えた。
そのあとに、美雨ちゃんにも好きな人を訊かなきゃいけない流れだよなって思った。
でも、「好きな人」って単語を出すのが恥ずかしくて、黙っちゃった。
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