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いち!!
私の名前は影杉地味子。
黒縁メガネが特徴的な高校一年生だ。
名前や見た目からわかる通り私は陰キャ、なのだが。
「地味子ちゃんってぇ~ゲーム上手だよねぇ♡」
「うわっ!勝田さん!!」
「いい加減ふわりって呼んでよぉ・・」
昼休み。
ご覧の通り、勝田ふわりさんに絡まれていますっ☆
勝田さんは顔が小さい。その代わりに目が大きくて『歩くプリクラ』と言われるくらい。
そしてスタイルも良いので男子達には一部でモテている。
ちなみに一部の理由には性格に難がありまして・・・・・・。
「地味子ちゃんってぇ~よくそんなにスマホゲーム使いこなせるよねぇ~。ふわりスマホよりもお料理の研究してるからぁ使い方よくわかんなぁ~い」
この語尾の伸ばし方(伸ばし棒が見える.......)!
自分のこと名前で呼んでるし!
いつもスマホ触ってるから使い方知ってんだろ!
あとそんな高い声どうやって出るん?将来の夢ソプラノ歌手? と言いたいことしかない。
要するに勝田さんは典型的な『ぶりっ子』女子だったのだ!!!
そんな事言ったら「は?ふわりぶりっ子じゃないし。あざといアピールしてるだけだしぃ~」ってキレられるから言えない。
「でもこのスマホゲームはね、勝田さんも操作できると思うよ」
「操作できたとしてもぉゲームなんて興味ないからなぁ~」
「このゲーム、『乙女ゲーム』って言ってイケメンが沢山いるよ。勝田さんのタイプを知らないからあまり言えないけど」
「い、イケメン!?ちょっと見せて」
「取り方乱暴だよ・・・・・・」
ぶりっ子女子の特徴の一つとして、面食いな女子が多いらしい。
「チッ あんまいねぇじゃねーかよクソが」
ぶりっ子女子特徴その二。裏がヤバい(腹黒な)人が多い。
「・・・・・・ん?待って。ドタイプな奴発見~♡めっちゃかっこいい~マジでかっこいい~~♡♡」
ぶりっ子女子特徴その三。かっこいい発言多め。
「ねぇ地味子ちゃ~ん。このキャラ、名前なんて言うのぉ~?」
首を傾げながら大きい瞳で聞いてくる。これはあざとアピールの一つだったな確か・・・
「早くしてよ」
ヒィィ こっわ。
「このキャラは鈴蘭 藍梨だよ。結構モブキャラだけど」
藍梨は序盤にちょっと出たくらいで、中盤からは殆どと言っていいくらい出ていない。モブと扱われてもおかしくないキャラだ。
でも名前は他のキャラよりカッコいいし身長も高くて美形だから隠れファンが多い。
そしてドジっていうギャップ付きなんですよ~そりゃあファンがいるわな。
「へぇ~モブなんだぁ・・・・・・」
「勝田さんはメインキャラの方が好きなの?」
「まぁ目立ってる方が好きだけどぉ・・・」
「でも、このキャラだけ輝いてるように見えたのぉ~後ろに光が見えるっていうかぁ」
「ぷふ、あははっ」
「・・・何よぉ」
ぷくっと頬を膨らませる勝田さん。
「いやぁ例えが独特だなぁっていうか・・・・・・面白いね、勝田さんって」
「や、やめてよぉ~」
「もしかして言われたこと、無いの?」
「うるっさいわねぇ・・・・・・」
私がツボにはまったせいか、暫くは声が枯れるようになってしまった。
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「そういえばぁ、このゲームの名前なんて言うのよぉ~」
帰り道。
珍しく勝田さんが「一緒に帰ろぉ~」って誘ってきた。
「『らぶすとっ♡』だよ。らぶりーすとーりーを略して『らぶすとっ♡』」
「ふぅ~ん・・・・・・ふわり、ちょっとやってみようかなぁ」
「あれ? 昼休み『スマホ使えない』とか言ってたじゃん」
「あの時はしょうがない。だって男子いるもん。男子といるときは『かよわいふわり』を演じてるんだから」
女子とだけなら本音言っちゃうってか・・・
「とにかくアプリ入れてやってみなよ!あ、明日どこまでイケたか教えてね」
「そんなに早くはやれないよぉ~」
今は夕方。どんどん日が沈んでいっている。
「次の角私は右なんだけど。勝田さんって・・・」
「ふわりは左」
「そっか~じゃあここでバイバイだね」
「いや、明日も会えるでしょぉ!」
「そっか、そうだね」
私は手を振る。
「じゃあ地味子ちゃん、またねぇ~♡」
「あ、うん」
「じゃあね、勝田さん」
シュパッ
「あ、れ・・・・・・?」
ポトッ
それはほんの一瞬だった。瞬き一つくらいだろうか。
「はぁ~殺っちゃったぁ」
ごめんね、勝田さん。私もこんな事したくなかったんだけどね・・・・・・!
「しょうがないの」
もともとあなたが悪いんだから。
あの時、私の彼氏に触れたのが悪いんだから。
「さて、私もいきますかぁ~」
ずっと突っ立ってたら、バレちゃうし。
「さようならっ」
ブスッ
ブスッ
ブスッ
ブスッ
自分の体・・・特に心臓を中心にナイフで刺していく。
あぁ・・・意識が遠のいていく。
自分の肉体と精神の輪郭が薄くなっていくような気がした。
ーーーー
もう私はそこにはいなかった。
空を飛んでいるようだ。
でもね、私本当に『らぶすとっ♡』が好きだったの。
だから最後に、勝田さんに教えられてよかったよ。
恨みは消えてないけど。
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ある女性は会社から帰っていた。
今日は早く切り上げれたらしい。
「今日の~ゆっうはんは~ステッーキぃ♪」
夕焼けを見ながらルンルンと帰路を歩いていたら。
「ん?」
何やら臭い独特なニオイがした。
「まさかだけどっ・・・!」
下を見た。それは、ただの道ではなかった。
「キャーーーーーッッッッッッッッ!!!!」
その女性は今年一番出したであろうくらいの悲鳴を上げた。
そこには、二人の少女が倒れていた。その下には赤い液体が・・・
女性が出した悲鳴を聞いて、近くにいた人が集まってきた。
空が一面にバラ色の炎をあげて深まろうとしていた。
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