じゅういち!!

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じゅういち!!

 もうこの階段を登ることが憂鬱・・・      ーーー  会長が応援してくれた日から二週間くらい経ち。 毎日私は福地君に英語の勉強をさせられた。 まぁ私が24点取ったのが悪いけどさ。 (ちょっとは休憩しようぜ!?) 福地との勉強会で辛いところ。 休憩時間がない!! 水を飲むくらいの時間はあるけど、5分間休憩などの幸福な時間がない!! 身体的にも精神的にも辛いんだよね。 ということで今日、清水みるくは理由をつけてサボることを宣言します! (唐突)      ーーー  「福地くぅん・・・」 「清水さん。今日も勉強会しに、行きますよ」 「それについて、ちょっといいかなぁ?」 「はい? 勉強会に何か不満でも??」 「実はぁ、みるく前会長に手当助けてもらったじゃぁん? その恩返しとして『ナマけっち』のキーホルダー、買ってないなぁって思ってぇ・・・」 「だからそのぉ・・・今日、買いにいっていいかなぁ?」 よし! よく言ったぞ清水みるく!! 「つまり、今回の勉強会には参加しないと」 「う、うん。そういうことになると思ぉう」 すると福地君がこんなことを言い出した。 「その買い物、僕も付いてっていいですか?」 「え」 「だってそんな理由でサボるかもしれないでしょ」 「サボんないよぉ」 「信用があまりから言ってるんです」 「・・・わかったぁ」 くそ。私の作戦を読んでるなんて。 でも信用がないってのは酷くない? 会長に買ってないのは事実なんだからね!      ーーー  学校から歩いて10分。大きな駅のすぐ近くにその店はある。 「これがアニメショップ・・・ですか。初めて来ました」 「みるくもぉ」 三階建てかな? ここなら絶対売ってそう。 「ナマけっちナマけっちぃ・・・」 ナマけっちが出てるアニメはどのブースだぁ!? 「清水さん、一階のすぐ目の前にありましたよ」 ジャラジャラ...と三個持ってくる福地君。 気付かなかった!?『とうだいもとくらし』ってやつね。 「そういえばぁなんで三個持ってるのぉ?」 「実はーー」 ガバッ 福地君が喋ろうとした瞬間。 彼は、誰かに抱き締められていた。 「旺恭~ おひさだね!」 「・・・はいはい。久しぶり」 「『はい』は一回まででしょ!? もう、と全く変わってないんだから」 (誰この人) 髪をハーフアップにしてやがる・・・! 服装的にこの近くの学校かな、私のとこではないのは確か。 (福地君、この子と・・・) 目は横長。かっこいい。 「この子と・・・付き合ってるんだ」 二人が一斉に私の方を見る。 「ち、違うのぉ。なんかそういう雰囲気だったからぁーー」 「プフッ 皆同じこと言うんだから。これで何回目?」 イケメン美少女が笑う。 (え、違うの!?) 「清水さん。この人、ですよ。隣の男子高に通ってるんです」 「俺富崎(とみざき)って言いまーす! よろしくな」 うわ、陽キャ来た。ていうかやっぱり女子にしか見えないって!! でもこれは、接近チャンスだな。 みるくのイケメンセンサーが『こいつと仲良くなれ』と言っている・・・! 「初めましてぇ! 期待のぉ高校一年生!! 清水みるくでぇす♡」 「お、いいじゃん! よろしく~」 ハァ...とため息をつく福地君。 「旺恭ため息つくなよー」 「俺は、こういうキャラ好きだぜ」 「本当? 嬉しいありがとぉう~♡」 え、今『好き』って言いましたよね? これは完全に脈ありでは? でもごめんね~まだあなたのことちゃんと知ってないから・・・ ていうか福福コンビ、どんな関係なん? 「なぁ旺恭、帰り一緒に帰らないか?」 「いや僕はーー」 「おい、まだ俺に折れてくれねぇのかよ」 「俺はずっとお前を待ってたのに」 ん? 話進み過ぎじゃね? 何そこでイチャイチャしてんの、福崎は私に告ったんでしょ・・・? 「福崎く、ん・・・」 「あ、清水っちには言ってなかったか」 「 俺ね、旺恭のことが好きなの 」 「小さい頃から、ずっと」 「ちょ、天斗(たかと)やめてって」 「・・・もしかして君も、旺恭好きなの?」 「そしたら俺達、ライバルだなっ!」 「清水さんコイツの言うことは無視していいですからね!?」 我慢できん。 (なんか腹立つわぁ) 福崎。マウント取りやがって。 「大丈夫だよぉ、福地君のことそんな目で見てないからぁ!」 私をイラつかせたこと、後で後悔してみせる!! 「それよりみるくぅ、福崎君に一目惚れしちゃったんだぁ♡ だからさ、にならなぁい?」 「友達?」 「そう! いきなり『付き合って』はヤバいでしょぉ。だからお友達から始めたいなぁって・・・」 勿論、福崎のことなんか好きでもない。 「みるくがぁ惚れさせてあげるからっ♡」 こいつの好きな人を福地→私に変えさせてやるだけ。 そして私のこと気になり始めたらバイバイ行き。 これはイケちゃうかも・・・♡ 「ごめん。友達にはなれない」 ・・・は? 「と言いたい所だけど俺そのキャラ好きだから、仲良くなりたいわ! 話してると面白そうだし」 結局はキャラ目的か・・・まぁいいだろう。 「だけど、お前を好きにはならないから。惚れさせるならやってみろよ。待ってるから」 「望むところぉ!」      ーーー  「単刀直入に聞いていいか」 夕方。西日が二人の足元に長く伸びている。 「旺恭、お前清水っちのこと好きなのか?」 「・・・」 「おい、なんか応答しろよっ」 俺は旺恭の肩を揺する。だけど旺恭は、俯いたままだ。 「無言は肯定とみるぞ」 「・・・・・・」 言葉が出なかった。 「旺恭・・・俺、諦めないから」 「?」 やっとこっちを見てくれた。顔は昔と変わらないな。丸い目に黒髪のストレートマッシュ。 「いつかお前は、俺のこと好きになるっていう未来が見える!!」 「ははっ、なんだよそれ」 旺恭の手に持っているのは、さっき買ったナマケモノのキーホルダー。 そのキーホルダーを彼は、強く握りしめていた。 『一個は会長、一個は清水さん。それでもう一個は僕用に』 (早く俺の事、好きになんねぇかな) ハァ 「? どうしたの」 「ねんでもねぇよ」 水のような夕やみが、ひたひたと家々の白壁をみたしていく。 「待ってろよ」 そう小さく呟きながら、一日は終わるのであった。
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